11月13日(木)・11月24日(月・祝)は休診いたします

30代女性 めまい・動悸

問診

高校生の頃から、頭痛・めまい・首肩こり・全身のだるさなど、はっきりした原因がわからない不調に悩まされてきた。

ここ最近は特にめまいと動悸が強く、病院で様々な検査を受けたが異常は見つからず、最終的に「自律神経失調症」と診断され、心療内科を紹介された。3年前にはIBS(過敏性腸症候群)とも診断されている。

小学生の頃から首肩のこりを自覚しており、寝違えや頭痛、めまいを繰り返してきた。
「首こりと自律神経の関係」についてネットで調べたことをきっかけに鍼治療に興味を持ち、当院へご連絡いただいた。

検査・治療方針

首〜背中にかけて強い筋緊張があり、触診が難しいほど硬さが認められた。
特に胸鎖乳突筋・肩甲挙筋には著明な張り(筋性浮腫)がみられ、症状との関連が考えられた。

初回は寸3−1番(0.16mm)の鍼を使用。筋緊張が強く手技療法では悪化の可能性があると判断し、鍼治療のみを選択。

主に以下の筋にアプローチを行った

①頭半棘筋:自律神経の調整、後頭部に広がる頭痛改善を目的。
②胸鎖乳突筋:めまいの根本的要因。著名な張りが確認された。
③後頭下筋群:精神的なストレスに強く反応するポイントで、自律神経のと関連が深い。

治療の経過

1回目:鍼の響きに驚きはあったが、施術後は呼吸がしやすくなり、体が軽く感じられた。フワッとした感覚が約1時間持続。

3回目:頻繁に起こっていた寝違えが改善。

5回目:腹痛(IBS症状)の頻度が大幅に減少。

10回目:症状全体が安定し、良い状態をキープできるようになる。現在もメンテナンス治療を継続中。

考察

いわゆる「不定愁訴」とは、病院の検査では原因がわからない頭痛・めまい・倦怠感・睡眠障害などをまとめて指す言葉です。
診断名としては「自律神経失調症」と言われることもありますが、現代医学では症状に応じた対症療法が中心となり根本治療は難しいのが現状です。

鍼灸治療の視点では、こうした不調の多くに首の深部筋のトリガーポイントが関与していると考えます。
・疲労やストレス → 首肩こりの悪化
・首の深層筋にトリガーポイント形成 → 自律神経の乱れ
・自律神経の乱れ → めまい・動悸・腹部症状など多彩な不定愁訴

今回のケースでは、胸鎖乳突筋や後頭下筋群など「自律神経と関わりが深い筋肉」のトリガーポイントを治療することで、めまいや動悸だけでなく腹部症状や睡眠の不調にも改善がみられました。

生活習慣の見直しや休養も大切ですが、それだけでは不十分な場合も多くあります。トリガーポイントに対し適切に治療を行い、自律神経を整えていくことが、根本的な改善につながると考えます。